HETE-2







ガンマ線バーストは宇宙の果てで起きている謎の大爆発

ガンマ線バーストは、地球から何十億光年も離れたところで起きている大爆発現象です。銀河系の全ての星が一年間に放つエネルギーが、十秒程度の短い間に放出されます。ガンマ線バーストは、人類が知りうる最も遠方の天体現象の一つであり、ビックバンをのぞくと宇宙最大の爆発現象なのです。しかし、どのような天体がその爆発現象を起こしているのかは、全くわかっていませんでした。

下は光度曲線と呼ばれる図で、ガンマ線バーストの時間変動を示しています。HETE-2 衛星が観測した 3つガンマ線バーストを縦に並べて書いてあります。横軸が秒を単位とした時間を、縦軸がガンマ線での強度を表しています。ガンマ線とは X線よりも波長の短い電磁波の事を意味します。ガンマ線バーストは様々な時間変動を見せ、中には継続時間が 2秒にも満たないものまであります。

ガンマ線バーストにすぐに望遠鏡を向けよう!

ガンマ線バーストは急激に暗くなっていくので、対応天体を観測するには、バースト発生後なるべく早く望遠鏡を向けることが重要になります。対応天体を同定し、バースト源の性質を調べる事が、ガンマ線バーストの研究では非常に大切です。

下図の灰色背景の画像、左がバーストの 20時間後、右が10日後のものです。"OT" で示された天体が減光しているのがわかります。また、赤の背景のイメージはハッブル宇宙望遠鏡で取られたガンマ線バーストの残光です。


HETE-2 はガンマ線バーストの位置情報を無償で全世界に提供します


ガンマ線バーストはいつどこで起こるかわかりません。我々の HETE-2 衛星は常に全天の十分の一にあたる広い領域を監視し、ガンマ線バーストが起こるのを待ち構えています。いったんガンマ線バーストが起きれば、その位置を衛星の上で自動的に決定し、バースト発生後、約十数秒でインターネットを経由して世界各地の観測者に伝えられます。

HETE-2 は 24時間速報体勢にあります


HETE-2 衛星は高度約 600 km、傾斜角度 2度の赤道軌道を飛んでおり、103分で地球を一周します。軌道上のどこでガンマ線バーストが起こってもすぐに連絡が取れるように、HETE チームは赤道に沿って 13ヶ所の主・副地上局を配置しています。上の図で黄色の円で囲まれている赤い四角は主・副地上局、その他の赤い四角は副地上局を表しています。主地上局では衛星に指令を送ったり、衛星がとった観測データを地上に降ろしたりしています。一方、副地上局は衛星が一方的に放送する情報を受け取る事ができます。赤い円が、それぞれの地上局が衛星からの電波を受信できる範囲を示しています。赤道上をくまなくカバーしている地上局のおかげで、HETE-2 からの速報がどこでも受信できます。

理化学研究所は、シンガポール主・副地上局、パラオ副地上局、マウイ副地上局、キリバス副地上局を担当しています。

HETE-2 は日米仏の国際協力によって製作されました



HETE-2 衛星は日本、アメリカ、そしてフランスの 3カ国による国際協力で製作されました。重さは 124 kg、高さ 89 cm、横幅 66 cm と衛星としては小さなものです。

広視野X線モニターは理化学研究所とロスアラモス国立研究所によって開発されました。この検出器の最大の特長は、非常に広い視野と高い位置決定精度を同時に兼ね備えた点にあります。視野の広さは 80度 x 80度 (全天の1割強) にも達し、0.2度 (10分角) の精度でガンマ線バーストの位置を決定する事ができます。この装置を用いて年間 20〜25個という頻度でガンマ線バーストの位置情報を提供しています。

位置決めの原理を示したのが上の右図です。ガンマ線バーストからの X線は符号化マスクのすきまを通って検出器に達しますので、マスクの影が検出されます。この影はガンマ線バーストの発生方向に応じて位置が変わるので、その位置の変位量から方向を決める事ができるわけです。

HETE-2 のとらえたガンマ線バーストに超新星爆発の証拠を発見

HETE-2 が 2003年 3月 29日にとらえたガンマ線バースト GRB030329 で、超新星爆発の証拠が発見されました。それも普通の星の超新星爆発ではなく、太陽の 50倍以上もある星が、その一生の最後にブラックホールを産み出す、まさにその瞬間の大爆発であることが明らかになったのです。1967年に発見されて以来、37年間も天文学者を悩ませ続けてきたガンマ線バーストの正体が、HETE-2 の活躍で、初めて明らかにされたのです

(上左図): GRB030329 は極めて明るい残光を伴っていたので、理研の屋上でも観測する事ができました。発見時は12等級だったものが、翌日には 16等級まで暗くなっています。後にこの残光から、超新星爆発に特徴的なスペクトルが発見されました。

(上右図): GRB030329 に見られた超新星爆発に特徴的なスペクトル。青い線は GRB030329 を、赤い線はこれまでにしられている超巨大星の超新星爆発のスペクトルを表している。どちらも同じような傾向を示している事から、ガンマ線バーストと超新星爆発の関連が裏付けられました。

太陽の何十倍も重い星の爆発からどのようにガンマ線バーストが発生するのか、その仕組みは全くわかっていません

ガンマ線バーストが超巨大星の超新星爆発に伴って生じる事が明らかにされましたが、爆発時にどのような仕組みでガンマ線バーストが放出されるのか、全くわかっていません。下の図は、その仮説の一つです。

ガンマ線バーストには、弱いものや、激しく変動するものなど、様々な種類が知られていますが、何がその性質を決めているのか、全く分かっていません。また、ガンマ線バーストは非常に大きな爆発なので、宇宙の果てで起きても地球で観測する事ができます。この性質を用いて、宇宙が生まれたばかりの頃に誕生した星を探そうという研究も始まっています。我々は、ガンマ線バースト研究の、ほんの入口に立ったに過ぎないのです。

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